高解像度カメラと広角魚眼レンズで広がるVRの可能性
映像機器の高解像度化が進み、8K撮影のできるカメラも増えてきました。
カメラの高解像度化は単純に映像が高精細になるだけではありません。例えば8Kで撮影した素材をクロップして4KやHD映像として切り出すことも出来るようになり、新たな表現方法やシステムの展開を考えることができるようになります。
それは通常の映像コンテンツだけでなくVRの分野でも同じような動きが見られます。
Studio.One (AZilPix)
その代表的なシステムとして紹介したいのが、ベルギーのハッセルト大学からスピンアウトして設立されたAZilPix社が開発した8KカメラとVR(広角魚眼映像)を組み合わせたStudio.Oneという映像システムです。
Studio.Oneの特徴
Studio.One(http://www.azilpix.com/index.html)は、8Kの高解像度撮影のできるカメラとEntaniya Fisheye HAL250のような超広角な魚眼レンズを組み合わせてライブイベントやスポーツ中継などの場面で活用できるシステムです。
高解像度で撮影した魚眼映像をVR形式に展開してVR映像として見られるほか、映像の中から任意の場所を選択してクロップして通常の映像として表示できるもので、クロップする場所だけでなく、クロップサイズを調整したり、複数指定することで、従来のスイッチング/ライブスイッチャ―と同様の映像をカメラ一台で実現することができるようになります。
また、クロップ位置は動かしたりズームしたりすることもでき、パンやチルトなどの動きを加えることができ、固定カメラでも変化のある映像を切り出すことができるシステムです。
これにより、従来までの方法に比べて劇的に少ないカメラの台数でありながらも、ダイナミックな映像を作り出すことができるようになります。
Studio.Oneがどのようなシステムなのかが理解しやすい動画です。
テーブルの中心にカメラが置かれたセットで展示がされています。テーブルの中央にはEntaniya Fisheye HAL250を上向きにしたカメラが設置されています。
例えば10人くらいの人が円卓を囲んで会議やディスカッションをしているようなシチュエーションでも、このカメラ一台でそれぞれの人の表情を切り出すことができます。
もちろん基本は全方位を撮影したVR映像となるため、一瞬のリアクションや表情なども逃してしまうことがありません。
高解像度カメラと広角魚眼レンズ
上記はホッケーのゲームで実際にStudio.Oneが使用されたケースを紹介している動画です。このような方法は従来のFHDカメラや4Kカメラでは解像度が不足してしまうため実現は難しいものでしたが、8Kを超えるような解像度で撮影できるカメラが登場したおかげで切り出した映像でも十分な解像度で表示できるようになったというわけです。
もちろん似たようなことは既存の360度カメラを使用しても実現できるわけですが、複眼カメラの場合はVR形式に展開する前にステッチが必要になります。被写体がカメラに接近した際にはステッチ部分が破綻してしまいます。それらのプロセスはリアルタイムのライブストリーミングにおいては遅延問題に影響してきますし、高解像度になればなるほど影響は大きくなります。
それらの問題は広角な魚眼レンズを使用したワンカメラのシンプルなシステムを使用することでの解決されるのです。
都合の悪い場面もクロップで隠せる
360度映像では、全方位映ってしまうため、時として映ると都合の悪いものまで映ってしまうという問題が発生します。例えば撮影を行うカメラマン自身とか、本来は見せたくはないものも映像中には多く存在します。
Studio.Oneを使用すれば都合の悪い部分はクロップから外してしまえば切り捨てることができるというのも大きなポイントと言えるでしょう。
Studio.Oneでの展開例
Studio.Oneを使用した展開サンプルが公開されていましたので掲載しておきます。
上の動画がVR形式の動画の中でクロップを指定しているもので、下の動画がHDで書き出された映像です。
残念ながらこの映像はEntaniya Fisheye HAL250を使用して撮影された映像ではないと思われますが、カメラの台数が少なく、またクルーの数が少なくても映像のバリエーションを増やすことができるのがお分かりいただけるかと思います。
VR映像と言えば、ヘッドマウントディスプレイを使用した閲覧方法ばかりが取り上げられることが多いですが、ヘッドマウントディスプレ以外での活用こそがVRの新しい展開や発展の可能性が大きいのではないかと感じることが多くなってきました。